赤電の補修の現状を、実車を前に皆さんになかなか説明する機会がございませんので、ここで少し説明したいと思います。

赤電の補修の現状を、実車を前に皆さんになかなか説明する機会がございませんので、ここで少し説明したいと思います。 長文ですが、興味の有る方は御覧ください。     こちらに移設して3年経ちます。 線路の上を走り回っていた現役時代と違い、同じ場所に置きっぱなしです。 常に同じ方向を向いておりますので、常に日光の当たるレストラン側の塗装劣化が激しいです。 紫外線による塗装面とパテの硬化と劣化。赤い顔料は紫外線にそもそも弱く白っぽくなって行きます。 また、昼と夜の寒暖差による鉄の膨張と収縮。 それらの条件で、塗膜のヒビ割れは進みます。   ひび割れ自体は大して問題では無いのです。 問題は塗膜(パテと塗装の層)と車体の鉄板の間から雨水が入り、鉄板表面に錆が発生します。 更に冬季は水が凍結して膨張。更に塗膜のヒビ割れが進行し、鉄板の露出も増え露出した鉄板は錆が出てきます。   この先長く保存するために優先して行わなければいけないのは、まずは錆を進行させない事です。   当然、鉄板の上に赤い塗料を塗るだけではございません。再塗装の際には以下の手順で塗装作業を実施しています。 ・塗膜剥がし ・鉄の表面に浮いた錆を落とす。 ・磨き・脱脂 ・浸透性防錆剤を塗布。(今期採用) ・防錆塗料を塗布。 ・場所に応じてマスキング。 ・赤塗装    もちろん、作業時は最低限の養生を行います。 車番などの表記類はすでに表示場所の採寸済。 マーキング類のデジタルデータ化済です。 赤とクリームの塗料は、現役時代と全く同じ物を使用しております。 只補修するのではなく、やり方を試しながら進め、浸透生防錆剤も春から部分的に使用して経過を観察しながら、いわゆる実証実験をしながら施工しております。   これだけの作業ですが、一日ではなかなか作業がすすみません。 下地塗装も一日空けないと赤塗装が良好に進まないなど、なかなかすんなりとは行きません。 今期はなかなか作業日に人が集まらず、作業も予定よりも進みませんでした。 ボランティアで運営しており、世話役は自営業者も多い事から、こればかりは仕方が無いのですが、最低限の事はやれていると思います。   先にも書きましたが、錆を進行させない事。 こちらの作業はなんとか出来たのではないかと思います。   写真では塗膜を剥がし、車体の鉄が出たままの箇所がありますが、浸透性防錆剤を塗布しております。 本来はこの上から2層の塗装がされる訳ですが、耐寒性を確認したいという意図もあり、少々見かけは良くないですが、大地のテラスの了承も頂き、この状態で一冬越します。   本当は一気に綺麗に出来れば良いのですが、ボランティアでは不可能です。 業者に頼めば可能でしょうが、数百万円の費用が掛かります。 さて、業者に頼むと言っても果たして出来る業者が有るでしょうか? 電車補修のノウハウを持ってる業者は無いと思います。   工場にも運べません。今展示されている環境下で、土地の汚染やダメージを与えずに補修しなければいけません。    道内某所の有名な駅で静態保存されている車両が、数十年ぶりに補修されたと聞いて見てきました。 補修後1年弱でしたが、既に塗膜のひび割れが発生。塗膜も一部が落ちてその下の車体には防錆処理もされていなくて、錆の膨張で塗膜が割れておりました。 窓枠も車体と同じペンキで塗られて、ゴムは完全に硬化しておりました。 塗装のやりかたも、要は建物の壁面塗装でした…。     これを見て、つくづく鉄道車両の保存と補修はハードルが高い物だと感じました。     711の場合は、マーキングの位置とマーク類を採寸。トレースしてデータ化。 塗料も現役時代と同じ塗料を手配。 また、より安価で高性能な塗料を調べたり、マンセル値などの色番号の保存など、補修方法のノウハウを蓄積しつつ、今後補修に加わる会員が増えたときに、伝達と引き継ぎをしやすい様に車両補修に関する情報をまとめています。     結局の所、この情報を蓄積して伝える事が車両の保存・補修に関して一番基本的且つ大切な事では無いかと感じております。   実際、これが出来てる所は殆ど無いとの事で、補修の際に実際に違う色が使われたり、書体の違うマーキングがされたりと云うことが起こってる様です。     あとは実際に車両の補修作業をする仲間がもう少し増えてくれると非常に嬉しいですね!     まだまだパッチワーク状態の赤電ですが、長い目で見て頂けますと幸いです。  (世話役:羽鳥)